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【DartsBar.05】小金井ダーツ【東小金井駅】

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2018.02.23 Fri.

中央線東小金井駅

 氏曰く「故きを温めて新しきを知る。以て師為る可し。」
 所謂「温故知新」である。温故知新まではわかっていた。よく聞く言葉だった。
 「もってしたるべし」ここを知らなかった。もしかすると、若き学生時代、どこかで学んでいたのかもしれない。しかし真面目な学生時代だったとは、自分でも言い難いので、大人になってから学の無さを、後悔したり恥ずかしい思いをたくさんする。人生はそもそもが学ぶ場なのかもしれない。一生勉強だという言葉もある。特に経験豊富な老練の方々が揃って言う経験談である。
 それこそ、氏曰く「学びて思わざれば、則ち罔し(くらし)。思いて学ばざれば、則ち殆うし(あやうし)」であろうか。ざっくり申し上げるとバランスこそが大切である。学ぶことも大切だが、同時に考えることも大切である。知識ばかりに偏って自分の考えが追いつかないと知識は活きない。逆もまた然りという事である。
 バランスというのは難しいものだ。勉強しているときは楽しく、新しい知識を蓄える方に意識が集中していて考えないことが多いかもしれない。逆に考えすぎていると、知識さえあればそんなに考える必要もない事まで考えて時間や思考を使ってしまう事が多い。
 バランスよく生きたい。と、思いながら、結局、人は偏って生きていくのだろうなと思いながら。

 ……そうだ、ダーツバーに行こう。

 本来、東京都各地をバランスよく回りたいという気持ちがあるのだが、偏りがちな私は今回また中央線に乗っている。中央線沿線はとてもおもしろいということもあり、ダーツバーが結構あるというのもあり、割と移動している範囲である。
 東小金井という駅は面白い。降りるとまず、空気が違うと感じる。澄んでいるというのか、なんというのか。そして駅の外に出ると、高い建物や大きいビルなどはそれほど見当たらないものの、活気がある感じがする。夜になればそこそこ飲み屋さんがあったり、ラーメン屋さんやバー、その他ちょっとした居酒屋があったりするし、にぎわっている。今回のお店に向かう途中でも、自転車にのった学生さんのような方々とよくすれ違い、そばに大学や何かがあるのかもしれないと想像できる。若かりし頃の自分と重ねてみたりしながら、何食べてるのだろうか、お金があまりないだろうから牛丼なんかをサクッといって、今日は終わりだろうかなんて、懐かしく恥ずかしくうれしい気持ちに浸りながら店までの道を進む。やきとり何本かつまんでビールを2~3杯飲んでお腹を膨らませておわりかな、なんていまどきの学生さんはそんなことしないんだろうけれど。
 東京のベッドタウンといった感じ、学生が多くいそうな雰囲気、住んだことはないが懐かしい雰囲気、こういうところにダーツバーがあるのは珍しいことではない。
 ダーツバーというと、どうも都心の繁華街などにあるイメージの方が強いかもしれない。しかし、ダーツバーをやったことがある私の経験では、都心でやるには厳しい所も多々ある。まずなにより家賃である。都心、繁華街では、やはりお店を維持していくのが大変で、努力が必要な事が多い。
 逆にこういう住宅街や少し静かな所にお店があるケースは意外に多い。なによりお店は「人」で出来上がっているので、「こういうところ」にあっても、やっていける……というと失礼だが、「こういうところだから」「こそ」やっていけるというのが正しいかもしれない。自宅のある駅で、まっすぐ帰らずにちょっとダーツして帰るような……、言うなれば「生活圏にあるダーツ」「ダーツが生活の一部」になる可能性が高まるのである。
 そういうお店に名店は多いと経験上知っている。なぜなら、その街を魅了するほどの魅力があるからである。

まるでお祭りのような空間

ダーツマシン合計3台。投げやすい間隔で設置されている。

 東小金井駅を出て、まっすぐ歩く。道なりにまっすぐである。小さいお店やバー、ラーメン屋さんなどを通り抜けると、わかりやすく飲食店がたくさん入っている建物に辿り着く。そこの二階が今回のダーツスポット「小金井ダーツ」様である。外から見るとすぐにわかる。迷いようもない。敷地内に入ると、大きい看板にメニューがあり、入口までいざなってくれる。とてもわかりやすい。外階段を上り、入口にたどりいてドアをあける。
 淡い提灯から漏れる光が店内を懐かしい色に見せて、心を幼いころに戻してくれるような感覚がある。小さい頃、父や母に手をひかれて行った地元の祭り、少ないお小遣いを握りしめて仲間内何人かで年に一度許された夜間外出を楽しむ感じに似ている。月並みな言葉で言うならば「ドキドキ感」「ワクワク感」といったところか。
 女性スタッフの声で招かれ、私はカウンターの方へと誘われる。ダーツ台も3台、各種揃っていて最高である。投げ心地よさそうな広さで投げる場所を隔離してくれているのもうれしい。カウンター側ではすこし薄暗く、スタッフ様とお話しすることもできそうで、アットホームな雰囲気があった。私の到着時はすでにお客様が何名か楽しんでいる状態だった。早い時間に伺ったからか、先ほど道ですれ違った学生さんたちのような年齢のお客様が多い時間帯だった。もちろん、食事をしたりダーツを投げたり、各々過ごして、とても居心地が良さそうだった。ダーツのレベルももちろん上から下までという感じで、初心者の方も安心して入れるのは間違いない。うますぎる人を見ると、初心者の方の中には恐縮してしまい、投げれないという方もいるかもしれない。気にならない店内の配置が完璧にカバーしてくれる。お店が投げやすい間隔で台を設置しているという心配りに感動した。

まるで縁日に来たかのような錯覚を覚える

 もちろん定期的にハウスなんかも行われているだろう。このくらいの広さがあれば、おそらく結構な人数が入る。気軽に入れる雰囲気も最高である。もちろんダーツをする気分ではないとなっても、おいしい食事もある。
 本来、ダーツバーだけではなく、飲みの場というものは、おいしいアテとおいしいお酒、それからみんなで楽しめる「何か」があることが多い。それは会話かもしれないし、何かのゲームかもしれない。ダーツに関わる業態ではもちろん「ダーツ」となることが多いだろう。ダーツはつまみだから……と以前お世話になっていたダーツバーのオーナーが、口癖のように言っていたことを思い出した。
 上手、下手ではなく、こういう場においてはやはり「いかに楽しむか」である。なによりこちらのお店はそれを大切にしていると感じる。これだけアットホームな雰囲気なので、いかにも好戦的だったりするプレイヤーさんはいないだろう。「ハスラー2」のトム・クルーズは映画の中にしかいない。(ハスラー2はビリヤードだが)本当にちょっとした趣味としてダーツを楽しんだりする人も多いということは、お店としてとても理想的だと私は思うのだ。お店の雰囲気から「お祭り」のような、懐かしい温かい、ダーツだけでなくお店全体、空間全体を楽しめるお店であると断言できる。

とりわさとビール

 ……おなかがすいてきた。

 というよりは、いつもの悪い癖でビールをずっと飲んでいた私だが、どうにもアテがほしくなってきてしまった。料理もおいしいこちらのお店だ。何を食べても間違いはないはずである。とはいえ、私はおなかがいっぱいになると、ダーツが入らなくなってしまうという恐怖もある。しかし、我慢できない事も多い。腹が減っては戦は出来ぬ、いや、ダーツが出来ぬ。出来ぬことはないが、集中力が続かない。空腹は敵である。
 まず何から頂こうかと思い、目に付いた「とりわさ」を頼んだ。こんな寒い時に、冷たいビールにとりわさなんてと思われるかもしれないが、これがまたいけると思ったのだ。「いける」というのは完全に「お酒が進む」という意味である。
 湯通しした鳥の胸肉を氷水で締める、そしてわさびとしょうゆで頂くというとてもシンプルな料理だが、こういう料理にこそ、きらりと光る技がある、と思っている。同じ材料、同じ調理器具、同じ調味料を同じ量、同じように使っても、「人」によって出来上がりの味が異なるという不思議がある。皆様も感じたことがあるに違いない。同じチェーン店のご飯屋さんだって、お店が違えば、味が少し変わったりする。そういうことだ。どうしてもその店のそれが食べたいと思うような「味」の事である。料理人、バーテンダー、バリスタ一人一人にそういう「味」が存在する。師匠から弟子へ、先輩から後輩へと語り継がれるように、技が伝承されて行く。同じ店とは限らないというのも素敵な所だと思う。独立したり、別の業態でその技や力をいかんなく発揮する人もいるだろう。
 「味」とは「人」なのだ。わさびの刺激とともに、体に染み入るように感じた。たった一つの料理でここまでの説得力に驚いた。それほどおいしいのである。……ご飯でもいいかもしれない、とビールを一気に飲み干してしまう。
 冒頭で「温故知新」について書いてあるが、昔から変わらずダーツバー、いやダーツバーだけではないが、こういった業態はすべて「人」の力である。「人」とは「味」であり、「味」とは「人」なのだ。
 どれだけ、SNSが発達し、そこでのコミュニケーションが多く、質的に良くなっても、結局目の前の「人」が相手の商売だということは昔から変わらないのかもしれない。どれだけネット上で店内の写真を見ても、実際に行ってみないと感じられないものはたくさんある。「現場」に行かなければわからないことは多いだろう。情報が多い今の世の中だからこそ、調べるだけでなく、自ら赴きたいと感じる。
 これだからダーツバーはやめられない。
 せっかくダーツをしているなら、ダーツが好きならば、ドアを開けてダーツバーを体験してほしい。
 きっと世界は変わるだろう。

小金井ダーツ
東京都小金井市東町4-38-26 トーケンプラザ207-208
042-401-1961

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