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【DartsBar.12】武士ダーツ&姫ダーツ【池袋駅】

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2018.04.27 Fri.

池袋駅

 ……とある映画でこんなセリフがあった。
 「人生はチョコレートの箱、開けてみるまで中身は分からない」
 その映画を見ていた私は、当時こう思った。
 「チョコレートの箱には、チョコレートが入っているんじゃないのか?」中学生だったような、高校生だったような。どちらかまでは思い出せないが、そのくらいの時に、だ。
 どこか、私がすれているのか、性格がひん曲がっているのかもしれない。おそらく前述の映画のセリフは「人生は楽しいもの、何が起こるかわからない」という事の表現だと思うが、例えたかったのはチョコレートのおまけの事だろうかと頭を悩ませる。チョコレートが喜びや楽しみを表現しているのだろうか。天邪鬼な事を思いながらも、とにかく、箱を開ける事が楽しみであるという事は、言葉の印象から伝わってくる。
 今にして思えば、チョコレートとはなんとも甘美な響きだ。甘いものは幸せの象徴としてふさわしいような気がする。空腹時にかじる一片のチョコを思い出す。枯渇した体にしみ渡るように溶けて、なじんでいく。これが人生における幸せの定義に近いのだとしたら、おもったより身近に幸せがありそうな気持ちになり、手が届きそうな気がする。時には味の違うチョコレートに感動する事もあるだろう。なにかのナッツが入っているかもしれない。そういうのを楽しむという意味かもしれない。
 どこかで「人生はおもちゃ箱のよう」という表現をしている外国のおばあちゃんがいたかのように記憶しているが、かすかな記憶で、その言葉に感動して、その刹那だけを記憶していて調べようにも難しい。とにかく人生を「箱」に例える人が意外と多い。
 開けてみないとわからないのはダーツバーも一緒で、ひとつの「チョコレート箱」のようなものである。

 ……そうだ、ダーツバーに行こう。

 もしかすると、池袋という街は世界有数のダーツの街かもしれない。駅周辺にはダーツショップが何軒も存在し、ダーツスポットもオンラインで調べられるだけで非常に多い。もちろん、オフラインやハードボードも存在したら、もっと数は多くなる。後で出てくるダーツショップスタッフさんが調べただけでも、池袋にある「夜のお店」の数よりダーツスポットの方が上回っている計算だった。その気になれば、いや、ならなくても24時間どこかでダーツが投げられる環境というのはすごいものである。複合カフェにもダーツバーにも、ダーツスポットにも、もしかしたら思わず入ったバーなんかにも、ダーツ台がある。池袋は世界最大と言っていいほどダーツにあふれる街なのだ。
 池袋駅の西口か北口を出ると西一番街がすぐにある。ここは数々の飲食店や夜のお店がひしめき合うエリアである。ここを進むと今回のお店への近道となる。数々の誘惑をかき分けながらどんどん進んでいく。ロサ会館がそびえ立つ通りにでるともうすぐという印象だ。ロサ会館内のダーツスタジアム様の中に、弊社実店舗の「S-DARTS DS池袋店」がございます。用品に詳しいスタッフも多数在籍しておりますので安心してお買い周り頂けます。池袋にいらした際は、是非ご利用くださいませ。エスダーツ池袋店は「チョコレートの箱」のようなお店ではないかと私自身思っている。
 そして、ロサ会館の前をどんどん進んでいく。「池袋郵便局前」という交差点のそばのビルに今回伺うお店がある。

 池袋で長らく存在するお店「武士ダーツ」「姫ダーツ」はもしかすると「チョコレートの箱」なのかもしれない。以前も書いたが、長く続く、それだけで名店の条件を兼ね備えているので期待値は大きい。

両極を成す、二つの「チョコレートの箱」

 エレベーターの扉が開いてフロアにでると、たまたまだが、社長とスタッフさんがいらっしゃった。気さくなお二人だった。お客様とお話中だった事もあり、恐縮しながらご挨拶すると、姫の方のドアを指し社長様が「こっちはまだオープンの時間ではないので、こちらで」と武士の方のドアを案内してくれた。スタッフさんはどうぞどうぞと武士の方のドアを開けて中へ案内してくれた。また後ほど、と私は挨拶して武士ダーツさんに入った。
 ご存知の方も多いと思うが、武士ダーツ様はショップ、姫ダーツ様はバーというスタイルのお店で、両極を成す。
 武士ダーツさんの中に入ると、投げているお客様でにぎわっていた。3台ダーツマシンがあり、バランスも非常によい機種選択と設置環境だった。台間も調度いい。広すぎないが、狭すぎない感じがする。中でもライブ1が置いてあるお店には、毎度毎度懐かしさを覚える。なにより音が懐かしく、ダーツを上手くなろうと思っていたあの頃の気持ちを、一本一本音で感じる事が出来る。最近のプレイヤーさんだったら、懐かしい気持ちより、逆に新しい気持ちになったりしないだろうか。なってほしいと願ってしまう。
 壁に貼られているポスターやサイン色紙などに目が行く。色紙に書かれている日付や、書いている人などから、そこはかとないノスタルジーを感じる。お店が一年一年、いや、一日一日を積み重ね、ここまでやってきたのだと感じる。
 なんだか、帰省して、仲間同士で集まり、母校を訪れて思い出話をしている夕方のような気持ちになる。それほど遠くはない過去に懐かしさを感じたり、壁に書いてあったいたずら書きを発見するような気持ちになる。
 自社ブランド「ASUKAダーツ」さんの試投げも豊富で、ゆっくり自分に合うバレルを探す事も難しくないだろう。もうすぐ「姫ダーツ」さんがオープンするというのに、懐かしい用品やポスターを発見してしまい、なかなか離れられそうない気持ちになり、スタッフさんと話し込んでしまう。ダーツに関してだけではないく、楽しく会話してくれるスタッフさんがいるというのはとても心強いものだった。後ろ髪ひかれるように、私は「武士」を出て、「姫」のドアを開いた。

 「姫ダーツ」のドアを開くと、すでに、私が「武士ダーツ」にいる時からいて、お帰りになられたと思われたお客様数名がカウンターにいた。そのままであった。おそらく皆様の楽しみ方としては、姫ダーツさんの開店前を武士ダーツで過ごし、開いたらなだれ込むというようなイメージかもしれない。
 店内はそれほど広くはないと思うが、広く感じてしまう。カウンターに数人座れて、テーブル席にも7~8人は座れる。大体規模的には20人は入るだろうか。とても温かい色の照明と店内の木目が、私を包み込む。温かい。ノスタルジックな光で、肌から温かさを感じるのである。
 女性スタッフに案内されてカウンターにかけて、今日の料理の仕込みをしている親しいスタッフさんに挨拶をする。当たり前のように私はビールをお願いして、ダーツケースをバッグより出した。
 マシンは2台あった。もちろん2機種。最高である。
 最近、動画で話題沸騰でお問い合わせが私個人レベルにまでなってしまった大ヒット商品の代わりになるものを手作りで作って設置してあったのに気が付いた。なるほど、こういう方法があったかと感心してしまう。
 こちらの社長様は「PCL」という講座もされている。こちらの姫ダーツさんで教えたりされているのだろうなと思って、こっそり、設置された手作りの「大ヒット商品」を試してみた。イップスで悩んでいる方がいたら訪ねてみるといいかもしれない。
 ダーツの用品だけがダーツのすべてではない。投げる人の体もダーツにとって大切な要素である。スポーツとしてとらえるならば、体のケアやトレーニングももちろん大切であると私も思っている。「武士&姫」さんは、用品、環境、体に関してのすべてにおいて、ダーツに必要な要素を兼ね備えいていると言って過言ではない。

 唐突ではあるが、投げていると、

 ……おなかがすいてきた。

 私は、名物だという「油そば」を頼んだ。是非食べてみてくれというほど、一押しなのだという。たしかに、ダーツバーやバーには簡単なものしかないと思われがちだが、ダーツをしていると意外や意外、お腹は減ってくるものである。スポーツである証拠かもしれない。以前も書いたかと思うが、食事がしっかりしているダーツバーもある。油そばが出来上がるまでは、たまたま隣の席にいわせたお客様とダーツを楽しんだ。しばらくダーツやっている人かと思ったのだが、今年始めたばかりだというのだから驚きだった。最近ダーツの初心者だというのに上手い人が多いなという印象がある。もしかして「初心者詐欺」がダーツバー業界で横行しているのではないだろうかと疑いたくなるほどである。気軽に始められる、初心者でもどんどん楽しめる。これはダーツが持つもっとも優しい部分かもしれない。
 何ゲームか楽しんだ後に、私は大きい声で名前を呼ばれ、私の席には大きな器の「油そば」が用意された。
 アツアツの湯気が立ち上り、まるで噴火寸前の火山のような佇まいで、載せられたばかりの海苔が少しずつシンナリとしていく様子が見えている。器の下からひっくり返すように一気に回し、思いっきり混ぜる。下に潜んでいたタレがあらわれて、また温泉卵も崩壊し、麺と一体化してゆく。少しずつ麺の色が変わっていく。光沢のある黄金の麺となる。
 濃厚で啜るのに苦労をする。麺同士がひとつになろうと結託し、私の口に入るのを拒んでいるかのようである。しかし負けまいと思いっきり啜る。勢いよく啜ることにより、思った以上の量が口の中に入ってしまう。口中で濃厚な味と、海苔のかすかな香りが広がってゆく感覚がたまらない。熱さに耐えながら、少しだけ噛み、のどを通していく。その熱さと濃厚さでゆっくりと食道を落ちて胃に到達して行く様子が、実況中継されているようだった。「最終コーナーを抜けて、最後の直線!!」と競馬の実況のような感覚。こんなに幸せな感覚はあるだろうか。消化され、体にしみわたって行くところまでもわかってしまいそうなほど、おいしい味と感覚である。メンマやチャーシューが食感にいいアクセントをつけてくれる。歯応えの緩急でまだ口の中に入っているのに、麺を持ち上げている自分に気が付く。
 味を変える事もできた。最初にひとまわし、お酢を回し入れる。それだけで清涼感が追加され、また濃厚で粘度の高かった麺全体を緩めてくれて、啜りやすくもなった。また一味変わっておいしく頂ける。
 さらにラー油もひとまわし入れる。辛みが追加されるだけでなく、全体と調和しなんとなく麺そのものがもの甘みが生きてくる。抜群に上手い。どちらの調味料も一周ずつ回し入れ、調度よい塩梅となり、私はもはや油そばの神に感謝した。油そばを食べるときに私がする失敗はだいたい調味料を入れ過ぎるということだったのだが、今日の私は最高の調整をしたということになる。
 なんでも調度よいのがいい。その他に辛味も用意してもらったので、軽くティースプーン半分くらいだろうか、振りかけて油そばの最後を飾った。

 実は終始カラオケを歌っている人がいる状態だったのだが、ほとんど気になる事がなかった。カラオケの音にもこだわっていて、投げる際や隣り合わせた人、カウンターの向こうにいるスタッフさんとの会話の邪魔になっている気がしないのである。これは不思議な現象であった。
 社長は「うちはカラオケと油そばの店だから!!これだけはしっかり書いてくれ!!」といたずらな表情でおっしゃっていたけれど、私は、どうしてもそれだけではない何かを感じていた。各々が好きな事や楽しい事をしつつも干渉しないされない、そんな環境である。それはスタッフ従業員すべてだけでなく、見知らぬ人から常連のお客様まですべてに行きわたる「思いやり」の心ではないだろうか。心地よく過ごせるように、好きな事が好きなように出来るように、ダーツやカラオケや食事だけではない「何かがある店」心地よく過ごす事も出来て、お腹も一杯になった。
 違う何かを通してでしか、本質を見抜く事はできないのかもしれない。まっすぐ、手数少なく効果的にと、目的に向かってストイックに向かっていては、肝心な何かが見えてこないのかもしれない。ダーツバーでありながら、カラオケと油そばと言っているのだが、そこにはかならず「ダーツ」が関わっている。
 逆にいうなら、ダーツを思う気持ちが、「カラオケの環境と食事」に現れているのだなと、感じ、勉強になった。本当に大切なものは、その周りからゆっくりみていけばいいのかもしれない。

 武士さんも姫さんも、イベントを多く開催している。そういうきっかけがあれば伺いやすいと私は思う。是非、二つの扉を、ひとつずつで構わないので、開けてみてほしい。きっと、またがんばろうと思えるだろう。
 ダーツも、これからの人生も……良いお店はそういう気持ちにしてくれるものだ。

 武士DARTS
 東京都豊島区西池袋1-38-7 MSビル6F・B
 03-3984-2660

 姫DARTS
 東京都豊島区西池袋1-38-7 MSビル6F・A
 03-3984-2663

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