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【DartsBar.15】max fukuyama【広島県福山市編①】

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2018.06.01 Fri.

広島県福山市編①

 いつもと違う方向へ向かう電車に乗る。これだけで少し緊張してくるものである。なぜ人はルーティンを作るのか。おそらくそれは、いつもと違う事が起こる「リスク」を避けるためだと思う事がある。しかし、それが必ずしも「リスク」とは限らない。以前のコラムに書いたスーパーイケメンのジェームス・ディーンの言葉の通りの事なのかもしれない。ジェームス・ディーンの言葉については以前のコラムを参照していただきたい。
 http://magazine.s-darts.com/c…
 結婚式の挨拶などでよく聞く「三つの坂の話」がある。そのオチとなる三つ目の「まさか」こそ人生にとって、良くも悪くも充実をもたらすのではないだろうか。
 広島空港からリムジンバスに乗り、一時間と少しくらいの時間で福山市に辿り着いた。道中、バスの窓から見る景色は私が生まれ育ったような景色に似通った所もあり、妙に親近感を覚えていた。川が多く、涼しげな景色の中に、たくさんの太陽光パネルを見つけた。もしかすると、エコ意識が高い県民性なのかもしれない。自然と一緒に生活するという意識という意味だが。
 山と川をくぐりぬけてバスは走行する。同じ緑でも、ひとつひとつ、少しずつ色が違うだろうし、コントラストもあって、同じ色にも無限に種類があり、木々一つ一つに個性を感じた。
 豊かな日本の原風景とでもいえばいいのだろうか、眼を通して体全体に緑が充填されていくような気持ちになる。仕事だというのに、体の中に力のようなものが宿っていくような気持ちになっていた。
 
 私どもは、ここで開催されるダーツのトーナメントにブースを出店させていただくことになり、やってきた。またここ広島県福山市はダーツが盛んな地域であることもわかっている。我々が普段楽しんでいるダーツとはまた一味違ったダーツを体験する事ができるのではないだろうかという期待が大きい。
 ダーツのルールは、世界各国日本全国共通である。このルールとマナーさえわかっていれば、ダーツプレイヤーはどこに行っても困る事はないだろうと確信している。

日常の「ちょっとした事」をより魅力的に

 会場に着き、準備をする。我々のブース設営と比べると、会場設営は本当に大変な仕事である。何十台もマシンを設置し、ステージにもマシンを設置する。プレイヤーがダーツをしやすいように、出来るだけ多くの人が入れるように、投げれるようにと苦労されているのである。感謝の気持ちである。そんな中、私のような者が、少々飲み過ぎ酔っ払って御迷惑おかけしたこともあり、私のような人を見る事もある。心苦しい。作業している皆様に申し訳ない気持ちになりながら、私は私が出来る事をただただ進めた。ビッグトーナメントはお祭りである。楽しむのももちろんだが、楽しみ方というものがきっとある。私は肝に銘じようと思ったのだ。
 たくさん人の力のお陰で、今日のダーツがあるという事を。目の前のボードに集中するあまり、大切な事を見失ってしまわないように……。

 無事、弊社エスダーツのブースが完成し、ホテルに戻り、少しだけ休憩を取ってから、ロビーで待ち合わせた。

 ……ダーツバーにいきませんか?

 私は、今回一緒に仕事をする人達に提案し、快く「行こう!!」と言ってもらえて安心した。メンバーの中には翌日の試合に出場予定の「某プロ」もおり、調度よいかと思っていた。みんなダーツが好きなのだ。
 我々が宿泊するホテルは福山駅のすぐそばであったため、この近辺をまず歩いた。小さい飲食店がたくさんあり、とても活気がある街だと感じた。
 私の生まれ育ったところは、少しずつさみしくなってきている。聞く話によると、福山市もだんだん活気が……という事だったが、そんなことは微塵も感じなかった。地方あるあるのような状態だと、後に会う人たちが口々にしていたが、私にはそう見えなかったのは、ここに長くいるわけではないからかもしれない。ただただ、魅力的な街だと思って歩いていた。おいしそうな飲食店が多い。
 たとえ、皆さまの言うとおりだったとしても、それでも少なくなっていくことを憂うより、在る事の有難さと大切さを感じた。ダーツプレイヤーならば、ダーツさえあればどこだって天国であろう。福山市は私にとって天国のような所だった。
 街の活気の問題は、なにも地方に限った事ではない。首都圏にさえ存在するのだ。お店をやる、盛り立てるというのは並大抵の努力で出来るものではない。小さいと言いながらではあるが、けして小さくはない。小さいけれども大きい光なのである。そんなお店の、軒先の提灯や、ネオン、看板などが輝いていて、素敵な街だと思った。

 ホテルから歩いて、5分ほどだろうか。今回の目的地「max fukuyama」様の前に来た。
 maxさんはプロ選手のユニフォームなどでロゴを見かける事もある上に、こちらの方ではお店も多い、有名なダーツバーである。ドアを開けるととてもさわやかに声をかけていただき、すがすがしい気持ちになった。
 私たちはテーブル席をひとつ占領してしまう形になった。店内はオープンしてすぐだというのに、もう何名様もプレイヤーがいて、ダーツを楽しんでいる。カウンターにもたくさん人が座っている。すぐにいいお店だとわかるのは、こういうところである。待ってましたとばかりに、開店よりお客様が多くいるという状況はダーツバーならずとも、どのお店にとっても理想である。
 ドアのそばにはダーツ用品をたくさん並べたショーケースがあり、プレイヤーの用品の各種要望にこたえてくれる。ショップが少ない所などは、こういうお店様から用品を調達するプレイヤーが多い事だろう。これはとても大事な事である。私どもも勉強になる事ばかりである。
 ダーツマシンは5台もあり、ひとつは話題の最新機種であった。私たちは乾杯をしようとそれぞれの好きなドリンクを注文した。

 お手洗いを使わせてもらおうと、場所を伺い、そこに向かって歩いていくと、大きなパーティールームがある。隠し部屋のようで驚くが、ここには大切な配慮がある。飲食店では時折、結婚式の二次会などで貸切になってしまう事があったりする。ダーツバーとて例外ではない。そのダーツバーをホームとしているプレイヤーがいた場合、貸切になってしまうと、突然街で迷子になってしまう事もある。やはり自分が好きな、愛しているお店で投げたいと思うだろうし、スタッフさんとの関係性もある。お店は「人」で出来上がっているので、スタッフさんに会いにいくという意味合いもあるだろう。
 そんな人でも、貸切になるのはパーティールームなので心配はない。もちろん貸切パーティも、他の一般のお客様とのトラブルを避ける事もできる。これほど最高なレイアウトのお店を私はまだ知らない。
 
 ……やはり、ダーツをしようと思うわけだ。ダーツバーに来たらダーツしたくなる。
 某プロも試合前で、少し調整をしようと思っていたと思い、何ゲームか投げる。某プロは、私が以前受けたプロテストの時の試験官でもあった。仕事とはいえ、こういう出会いがあるのもダーツの醍醐味の一つと言えよう。
 ダーツとは不思議なもので、こういう人と知り合うことや、こうしてダーツを投げる機会に恵まれる事が多い。きっとダーツを始めたということ自体が、運命なのだと確信を持って言える。
 そんなことないと思っている人もいるかもしれないが、かならずダーツを続けていると、これは運命なのかなと思う瞬間は訪れるので、待っていてほしい。
 ダーツと人生はそれほどまでに魅力的である。というより、もしかするとダーツが日常の少しを魅力的にしてくれて、そう思えるのかもしれない。 

 どんどんお店にお客様が来店されて、気が付くとほとんど満席のような状態になっている。そのお客様の中には、やはり試合前日ということもあって、プロのプレイヤー達が目立った。
 活躍目覚ましく有名なプロプレイヤーも何人もいる。カウントアップを中心に御自分の練習メニューや調整メニューをどんどんこなしていくのである。一般のお客様もダーツの事が大好きな方が多いお店だった。御自分のコレクションを嬉しそうに見せてくれる人などもいた。
 ほとんどのお客様が当日会場でお会いできたという事は、後に詳しく書いていきたいが、この街のダーツプレイヤーの皆様からは本当にダーツが好きなんだという気持ちが伝わってくるのだ。

 お客様が多くても投げるために待つというようなことは、まったくなかった。なにより台数が多い事、そして台間も適切で投げやすくスムーズにプレイできる事が効果的でもあった。プロライセンスを持ったインストラクターも多く在籍しているようで、アドバイスをもらうには最高の環境だ。スタッフ様たちも皆ダーツが好きだという事を感じる事が出来て、安心する。少しだけ薄暗く、安心して自分自身をさらけ出しダーツを楽しむ事が出来る環境というのは、ありそうでない。まさにその環境はどこかといわれればこちら「max」様であるといえる。
 
 オススメのカクテルを伺うと、フレッシュフルーツを使ったカクテルがオススメであるという事だった。私のようなおじさんになると自ら進んで果物を摂取することはほとんどない。私の燃料は基本的にビールである。お酒を飲むとつまみのしょっぱいものや辛いものがほしくなり、お酒が抜け始め、脱水してくると甘いものがほしくなったりとめんどくさい生き物である。果物を食べるなどという習慣がそもそもない。
 こんなおっさんがフルーツのカクテルなんか頼むと気持ち悪いだろうかドキドキしながら、スタッフさんに伺った。
 「ちなみに……オススメのフルーツはどれでしょうか?」
 ……イチゴだった。よりによって、こんなおっさんにイチゴという不釣り合いなものをと思ったが、オススメのものだ、間違いなくうまいにちがいない。

 出てきたロックグラスの中身はきれいに均等で、今し方にフレッシュだったイチゴを潰して濾したとは考えにくいほどきれいに仕上がっている。きれいに泡が立ち、出来立てのカクテルの香りが、口に近づけるほどする。
 口をつけて驚いた。抜群なバランスなのである。まず出来立て特有の泡が私の口付近にぶつかり、イチゴの香りをさせてくる。カクテルはなめらかに、果実を感じさせることなく口内へ滑り込んできて、舌先からのど元まで、伝うように甘さを感じさせるが、後味がすっきりしているのだ。カクテルが食道を通ると、逆行してイチゴの香りや風味が一気に鼻孔目指して駆け抜けてゆき、鼻から抜ける。まるで春の風のような強さと勢いがカクテルにはあった。首から上は完全にイチゴに支配されてしまった。だからといって、まったくくどくない。むしろさわやかなのである。
 おそらく私の頭部はイチゴになっていたに違いない。みんな私をイチゴと間違えてしまっただろう。
 あまりに不思議な味で、アルコール感も感じにくい。しかし飲みごたえがないわけではない。私は私なりに、レシピを想像してスタッフさんに訪ねてみた。あれとこれを使ったと思うのですが……などと伺いながら、さわやかさの正体を突き止めようと必死になっている自分に気が付いていたが、止められない。ベースと味付けは合っていた。しかしそれだけではこんな味ならない。不思議だと思っていた。それほど新鮮ないいイチゴをつかっているのだろうか。しかしフルーツは高い。一杯の値段では採算が取れず、お店がつぶれてしまうと思って、あーでもない、こーでもないとやっていると、こっそり隠し味を教えてくれた。
 合点が行った。そういうことだったのか。
 こんなにおいしいカクテルは飲んだ事がないし、こんなにおいしいイチゴは頂いた事がない。点滴にして体に入れてもよさそうな濃度で、体を通過していた。私の内臓は完全に主な燃料のビールに打ち勝ってしまい、イチゴの香りと味が爪先まで行き渡っていったようだった。

 とても温かく、常連様だけでなく私たちも、なんとなく生きている日常が少しだけ魅力的になるようにしてくれる、そんなお店だった。おそらくこの広島県福山市にあるダーツ関係のお店はみんなこうだろうと察する事も出来た。
 一番最初に良い店に出会えた。きっとこれからの数日間、ダーツをもっと好きになるだろうという確信がもてた。
 広島県福山市近辺の方、もしくは福山市に行く機会があれば、ぜひその扉を開いてほしい。
 ダーツは人と人をつなげる。世界各国ルールは共通で、臆する必要もない。
 きっと人生が豊かになってゆくような気持ちになるだろう……
 こちらのお店で偶然居合わせた、活躍目覚ましい有名プロのお一人も一緒に、私たちは次のお店に向かった。きっとまた良いお店である。
【To be continued...】

max fukuyama
広島県福山市伏見町4-26 岡崎ビル2F
084-922-1505

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