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【DartsBar.17】ダーツ大学【広島県福山市編③】

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2018.06.15 Fri.

広島県福山市編③

 ある高校教師が、自分の生徒の卒業式が終わり、最後のホームルームで彼らに次のような言葉を送った。「大学時代の友達は一生の友達になる」と。感動なのかなんなのかわからない涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、ハンカチでしきりに拭いていた。
 突っ込みどころ満載である。まず、一緒に学び舎を去る同級生たちは、どうなる。一生の友達ではないと、いわれてしまっているようである。なんと嘆かわしい。そもそも大学に進まない生徒も中にはいたはずである。何を言い出すんだと思わなくもないタイミングでの言葉だった事だろう。
 とはいえ、その高校教師がいわんとしている事もわからなくない。義務教育や、高校など生まれ育った地域に由来した人間関係も大切ではあるが、その先に別の土地や環境で、同じ志を持った仲間と過ごしたり、切磋琢磨する事の素晴らしさを説きたかったのかと、今では思う。
 その先には思わぬ運命的な出会いをして、人生がより充実していくという事だと思う。それがいいたいものの、感情が複雑になってしまった前出の教師は上手く生徒たちに伝えられなかったに違いない。涙でぐちゃぐちゃになり、感情の高まりで、思ったように言葉にならなかったのだろう。
 人に何かを伝えるというのは難しい。少なくとも大人から子供や、上から下へというのが本当に難しいものである。

 広島県福山市は、もうほとんどダーツの街といって過言ではないくらいに、我々プレイヤーにとって良い街である。たくさんのダーツのお店があり、また店舗同士も仲が良く協力関係があり、街を推してダーツに力が入っていると感じている。地方都市あるあるの「最近景気が……」なんて話もちらほら耳にしているが、私の目からは天国なほど、お店だけでなくお客様も多く、また皆様楽しんでダーツをしている。こんな街があったらいいなと思っていたような所だ。
 大切に育んでほしい。ダーツの文化が魅力的な街だ。
 そして何より、ここには「ダーツ大学」という素晴らしい大学があると聞いた。まさにダーツプレイヤーにとっての最高学府である。

ダーツ大学ダーツ学部プレイヤー学科がここにある

 「ダーツ大学」様は福山駅からは少し距離があった。会場や福山駅周辺のダーツスポットなどで伺っていて、お店の場所や雰囲気などのイメージを固めていた。街中からはかなり離れたところにあるという、本当に大学のような立地ではないかと感動さえ覚えた。何となくではあるが、駅から距離がある、広い、というのが大学の立地する場所のイメージである。
 福山駅のロータリーを背に、車でまっすぐ道をゆく。まったく初めての土地なので、私はナビに従うしかない。いつも思うが、まったく知らない場所や慣れない場所を運転する時はかなり緊張する。ナビの音声に「この先しばらく道なりです」という案内でさえ、私は「はい」と返事をしてしまうほどである。しばらく道なりですという言葉は意外と安心させてくれる。夕方から夜に少しずつ変わって行く空はとてもきれいだった。ダーツ大学の側にたどりつく頃には、完全に夜になってしまっていた。黄昏は一瞬のようだった。
 ナビが左折、右折と私に指示し始め、したがってどんどん道を進んでゆく。真っ暗で、倉庫がたくさんあるブロックへと侵入していく。「なんとか物流センター」のような看板がたくさんある。車の通行する量も少なく、人が歩いている気配はなかった。おそらくお昼などは、仕事をする人とその人たちの車でにぎわっている所だと思うが、夜になると一気にお休みモードになる。すこし心配になってくる。本当にここにあるのだろうかと。
 でもご安心いただきたい。すぐに見つかった。くるくると、きれいに整備されている倉庫街をナビの指示通りに行くと、見間違えがないような程わかりやすくお店が在る事に気が付いた。大きい倉庫や建物の中に一か所だけ明るく電気が付いた建物がある。周辺で明るい所は、電話ボックスと駐車場と、こちらくらいなものである。パトランプが回転し、倉庫街全体に向けてお店が開いているという事を知らせてくれていた。なんだか砂漠を歩いて、緑を見つけたような気分になる。
 「ダーツ大学」様はここだと、しっかりと教えてくれている。スタッフさんに伺って、私達は駐車場に車を止めて、お店の入口へと急いだ。

 お店の一階にはなにやらオシャレそうなお店が入っていたが、暗くてわからない。私達はただ、光が導いてくれる方向に進んでゆく。階段の上のドアの向こうから誘う光に向かって、一段、一段と踏みしめ登って行く。本当に、夜遅くまで残ってしまって暗くなってしまった大学時代の研究棟のような雰囲気がしている。あっちの部屋ではこれをやっていて、こっちの部屋ではもう終わってみんな帰っている……というような、懐かしいような気持ちになってゆく。若いころに少しずつ戻って行くような錯覚を感じる。誰もいない学校に忍び込んでいくような、背徳感のようなものがそうさせるのかもしれない。そんな事を感じているうちに、お店の入口が現れた。
 ドアを開けて中に進むと、とても広い店内である。奥に5台マシンをおいていて、投げ場はとても広い。まるでビッグトーナメントの会場のような気持ちにさえなる。もうすでにお客様がおり、投げる前準備の段階だった。振り返るとダーツ用品を販売している。オシャレな什器に感動した。スナップオンのツールボックスに商品を並べ、ガレージっぽい雰囲気をだしている。商品数も多く、用品選びではこちらの地域最強なのではないかと思っている。伺うと、やはり遠方より来られるお客様もいるとのことだった。

 今まで再三「隠れ家」や「秘密基地」などの形容をしてきた。実際にそうだと思ってそう書いてきたのだが、ダーツ大学様は抜群に「隠れ家で秘密基地」のようである。外観からは全く想像できない。「アジト」といえばいいのだろうか。一緒に行った弊社社員も「クローズやワーストに出てきそうな」というほどである。とはいえ、そんな恐い雰囲気ではない。ソファやテーブルも何セットも置いている7セットくらいだろうか。そこにみんなが集まってダーツのあれこれについて語り合う姿が容易に想像できた。ガレージのようなパーソナルな空間に思えるようでもあり、仲間たちが集まって談笑し、ダーツをするアジトのような雰囲気もあり、たまらなく好きになっている自分に気が付いた。店内は明るい。照明の暗めのダーツスポットはたくさんあるが、ここまで明るいお店はそれほどないかもしれない。昼にトーナメントに出ているような気分になれるほど明るいのだ。
 ドリンクもしっかりある。私はビールを頂いてしまい、同行してもらっている同僚は私の代わりに運転するということもあり、パインジュースをお願いした。先輩、なんかすいません……という気持ちが沸いてくる。メニューの裏にはびっしりと、訪れたプロプレイヤーのサイン書き込まれていて、ダーツ大学様が培ってきた歴史を感じる。マシンの前にあるテーブルにもサインが書かれたフライトなどがたくさんあった。懐かしいなというサインもあるし、現在もしっかり活躍されている方のサインもある。

 お店の雰囲気に酔いしれていると、続々とお客様が集まってくる。常連様達のようだった。思い思いの所に腰をかけてはダーツを準備している。まるで大学のサークルの部室のような雰囲気がし始める。皆様ダーツがお好きだという事が伝わってくる。各々のダーツケースからダーツを出してはセッティングをチェックしたり、代えてみたり、投げてみて、フォームをチェックしたりと、投げる前の準備をしている。
 世間話は、行われていたトーナメントの話や、明日出場予定のトーナメントの話など、会話もダーツばかりである。……私が伺ったからそうなのかもしれないとも今思う。もしかしたらもっと普通の世間話がメインなのかもしれないのだが、なんだか「取材だそうだ」「エスダーツだそうだ」と恭しく接してくれている事に、私自身申し訳ない気持ちに少しなってしまう。確かにこんなロン毛が急にあらわれたら驚いてしまう事だろう。どうしても48人いる、もしくは46人いるアイドルの話をしてくれないのである。とはいえ、私はくわしくないのだが。
 そんな中、私とダーツ大学に通われる3名のプレイヤー様との連続対戦する事になった。まるで道場破りのようなシチュエーションに私も滾るものが溢れてくる。やはり本当にわかり合うにはダーツをする事である。文化人類学でいう所のフィールドワークである。太古昔に通っていた気がする大学で勉強した手法は、今ここで役に立つのだ。
 レベルは皆高かった。レーティングもさることながら、ダーツを勝負するという事に関しての強さが皆様に備わっていた。割と野良試合というか、トーナメントでもリーグでもない、普通にそこにいる人とマッチングしてもらうか、声をかけて勝負する事が多い人は、こういう時に強さを発揮するような気がしている。
 お互いの強さ、上手さ、ダーツへの愛を確認しあって、私達は本当にすぐに打ち解けて、仲良くなれた。杞憂に過ぎないのかもしれなかった。無理に推しメンは誰かという議論をしなくていいのだ。
 ダーツの最も素晴らしいところである。以前にも書いた気がするので、割愛するが、そういう事である。
 

 「大学時代の友達は一生の友達になる」
 この言葉の通りである。ここ「ダーツ大学において」「出来た友達は」「一生のダーツ友達になる」という事である。ダーツプレイヤーにとって、ダーツは人生かけて取り組む学問である。名前の通り、学ぶ人が多く、ダーツを通して、年齢、性別、環境を超越して人々は親しくなれる。国籍だって超越するだろう。そういった事を専門に勉強できる場所である。お酒やタバコに影響されない環境がここにある。「投げ場」というより、本当に、そのお名前の通り「ダーツ大学」という表現が正しい。
 たくさん並べられた「非常食」達は学生時代の食生活そのものである。お湯を入れて3分待てばすぐ食べられる。体に悪いとか、色々言われるかもしれないが、家に帰ってお湯を沸かして、食材を切って、ご飯を炊いて、という時間でさえ一分一秒が惜しいと思った事があったと思う。それならば、もう1投、もう1ラウンド、もう1レグ……と、少しでも夢中でダーツを学んでいたい。
 そんな人の為に、ここはある。そして、同じ志を持つ仲間が集う場所。初めての人も、もう長くダーツをしている人も、同じ「学生」なのだ。学び、生きると書いて「学生」である。
 ダーツを今後も学び、生きていきたい。広島県福山市に行ったら、体験入学をお勧めする。

 一生勉強、それがたとえダーツだとしても。それを感じさせてくれる人たちが、広島県福山市には多かった。なぜなら、きっと「ダーツ大学」という最高学府があるからこそ、なのかもしれないと感じた。

 ダーツ大学
 広島県福山市卸町11-6 2F
 084-953-6878

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