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【DartsBar.18】GAPS【相模原駅】

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2018.06.22 Fri.

JR横浜線相模原駅

 ……人間万事塞翁が馬、という言葉がある。
 日々の生活でも実感する事があるのではないだろうかと思っている。私も拙いながらも中途半端に歳を重ねてきてそう思う事がある。出来る限り、フラットな心持で生きていたいとは思うものの、生きとし生けるもの皆我儘なのか、そう思わぬ事も多いと自覚する事が多い。
 ダーツで例えるならば、たとえばワンブルでラウンドを終えたとして、相手が調子よくトンやハットでよく削って、少しずつ差が開いていく。相手が削り過ぎていて、ちょっとしたミスが起こってバーストやノースコアで待っていてくれるタイミングでハイオフチャンスが来る。これをきっちり決めて、勝つという事もあるだろう。これをラッキーだと思う日もあるだろう。
 上がれば勝ちだ。もちろん、その逆もある。自分の削りがよくとも、ちょっとミスをしていて、もしくはなぜか合わなくなってゆき、相手にハイオフされる事もあるだろうと思う。これは運で左右されているようで、そうではないのが、ダーツである。しかし、心ひとつで運か不運か感じる事もあるだろう。入るからといって、削っていると上がりにくい数字を残してしまう。オープンなのでシングルでいいのに、そのシングルがはいらないなんて事もなくはない。逆に無理だと思うほど難しいハイオフを決める時もある。人生は色々だ。
 不運だと思う事は、本当に不運だとも限らない。逆にラッキーと思っている事が、後々の何かにあまりいい影響を与えないかもしれない。どちらも同じように受け入れて生きていくというのがいいのかもしれない。
 なによりダーツは、運不運に左右される競技ではない。実力勝負である。日々の練習や経験の賜物である。

 ……そうだ、ダーツバーに行こう。

 車内アナウンスが相模原を告げて、私は降りた。電車のドアが開いた瞬間に外に出ると、都心部で電車を降りるときとは全く違う空気が体内に飛び込んでくる。どこかすがすがしい空気である。私の肺の中を緑が満たしていくような、そんな質感のある空気である。梅雨の中休みのようなさっぱりとした天気のおかげもあるかもしれない。ホームや、改札に向かう階段など、どことなく懐かしさを感じながら進む。学生も多く、ここに住んでいる人の多さも感じる事ができて、なんだか帰ってきたかのような気持ちになってくるのがわかる。しかし、私はここの出身ではない。それでも「帰ってきた」と思うに等しい懐かしさを与えてくれた。
 改札を抜けて、にぎやかな方へと歩みを進める。階下には大きいロータリーが広がり、バスやタクシーが客を待つ。駅のすぐ真ん前に商業ビルだけでなく、家屋が広がっていて、都心部では感じられない温かさを感じてしまう。こんなに駅が近いと通勤通学に便利だろうと、実利的な事まで考えてしまう。
 そんな駅そばの温かな住宅街を歩いていくと、小さいバーなんかもあったりする。家にまっすぐ帰らない(もしくは帰れない)お父さんなんかが、軽く一杯ひっかけてるんだろうかと想像しながら、通過し大きい通りに出た瞬間に目の前に現れた。

 「GAPS」様は都心部ではあまり見る事のない大きさのお店である。まるで学生時代に自転車での帰り道に立ち寄ったゲームセンターのような外観でありながら、中はシックに、ドラマに出てきそうなかっこいい内装を併せ持ち、我々の心を掴んでは離さないお店だろうと言える。

相模原ダーツクラブハウス「GAPS」

 正面の入口の自動ドアにはポスターが貼られていた。
 この日は「GiFT」という、いわゆる街トーナメントが開催されている。私自身、街トーナメントの雰囲気が好きである。ビッグトーナメントでもない、とはいえハウストーナメントでもない、独特の雰囲気が街全体を支配する、あの感じである。渋谷、新宿、秋葉原、町田、吉祥寺……今、パッと思いつくだけでもたくさんの街のトーナメントがある。
 相模原も今回より「GiFT」が始まった。ダーツを通して、街全体を盛り上げようという有志が集まり、企画されたと伺っている。素晴らしい事である。ダーツというものは、年齢性別関係なく誰もが同じルールで楽しむ事ができて、人を選ばない。とてもいいスポーツである。シンプルなルールだからこそ、老若男女すべて気軽に楽しむ事が出来る。こんなに間口の広いスポーツ、ゲームは他にあるだろうかと思いながら、自動ドアを両手でこじ開けた。……ダーツの街、相模原として名乗りを上げようという意気込みに胸が打たれていた。

 ドアを開けると熱気が私を襲った。実際に気温ではなく、ダーツしている人たちの勢いのようなものが。トーナメント参加者達の熱い気持ちがひとつの塊となって、店内に蓄積されていたのだが、私が封印を開放してしまったようだった。皆様、熱い思いでトーナメントに臨んでいるという事が伝わってくる。様々なお店のシャツや、ゲームシャツをお召の方々が1スロー、1ラウンドに息をのんでいる。いいプレーがあれば、歓声を上げたたえあう姿がたくさんある。
 とても盛り上がっている。相模原のダーツは私の想像を越えて盛り上がっているのだ。気圧されてしまいそうだった。
 入口付近に5台くらいのダーツマシンがありそれぞれのロビンを行っている時間帯だった。本当に老若男女多数のプレイヤーがそろっている。入口付近でコントロールをしているスタッフさんに挨拶をして、中に進む。人が多いのだが、しっかり通路は確保されており安心、安全なトーナメント進行だった。

 入口付近の試合台を抜けると、そこにはまるで自分がドラマか映画の中に紛れ込んだかのようなかっこいい、オシャレで素敵な空間が広がっていた。下に広くスペースがあり、上にはロフトのように席が用意され、その下にもテーブルがある。奥に大きなバーカウンターがありDJブースを彷彿とさせた。ダーツスペースはまるでクラブのようになっている。
 ダーツマシンも二つあり、こちらでもゲームが繰り広げられている。なんて広く、またダーツが見やすいお店なのだろうかと驚きを隠せない。最新機種も設置しており、上から見る景色は圧巻の一言だった。投げやすさだけではなく、見やすさまで徹底的にこだわっている店内のレイアウト、内装である。
 ……この感じは何だろうか、と思う。既視感というか、デジャヴというのか。若いころに見た邦画だったか何かで、クラブに行った主人公がこの景色に似た光景の中で友達を探していたような気がする。ドラマだったかもしれないと思いながら、そんな世界に出てきそうなダーツバーに感動した。
 店内ではどんどん試合が進行していく。エントリーリストも確認していたが、有名なトッププレイヤーも何名か参加していた。もちろん、人だかりが出来ていたり、嬉しそうに話しかけているファンもいたりした。ダーツプレイヤーのいい所は、身近であるということだ。本当に身近である。そこにいるという事が起こりえる。そしてプレイヤー達も最近ではファンサービスを怠らない。しっかりと一人一人に対応し、サインなり写真なりに応えていた。もちろん、集合写真を撮ったりする事もあるだろう。こうやってファンとコミュニケーションを直接取る事が出来るのは、プレイヤー、ファン、双方にとってとても大きな事だろう。
 
 街トーナメント「GiFT」開催中という事もあり、私は一度お店を出て開催店舗を何軒か見てみた。もちろんどの会場にも参加者や応援の方が詰めかけ盛り上がっている。とても熱い雰囲気がどの店にもあった。GiFTの開催店舗は全部で5店舗。個性的でもあり、紹介したいと思う店舗ばかりだった。
 相模原のダーツが、今、熱いという事は疑いようもない。

 お店に戻ると、予選ロビンが一段落付いているのか、試合中の台は少なかった。また、各店舗、予選が終わっているところも多く、こちらの「GAPS」様のプログラムに進出した方々が集まり始めていた。お知り合い同士の方々がお互いの戦績を確認したり、乾杯をしたり、各々集まっていた。有名プロを囲んで記念撮影をしていたり、皆思い思いの時間を過ごしている。
 街トーナメントというのはすごくいい。ビッグトーナメントの良さ、ハウストーナメントの良さが調度よく融合し、また街全体を盛り上げている。ゲームシャツやそれぞれのお店のシャツを着た参加者が、街のダーツスポットを巡る。行った事のないお店があったとしたら、そのお店に行くきっかけにもなる。
 都心をメインに活動しているプレイヤーの皆様には、すこし距離があって行きにくいと感じるかもしれない。しかし、私は一度仕事終わりで伺った事もある。意外と行けなくはない。なぜならば、私にはダーツがあったからだ。ダーツさえあれば、私たちはどこにだっていけるだろう。
 相模原近辺をホームとしている方々なら行きやすい事だろう。都心に出るには時間がかかるし……という方もいると思う。そんな方には是非、相模原をオススメしたいと思う。

 相模原が今熱い。これほどまでに多くの参加者を集められる地域は少ないといえる。皆、思い思いにダーツを楽しんでいる。必ず、第二回が行われるだろう。これほどまでに相模原はダーツを熱望しているのだから。
 そして、各店舗個性があり、楽しいダーツの街だった。前回まで続いた【広島県福山市編】の福山市のように、相模原もダーツの街だと言える。とてもいい街だ。
 「GAPS」様にまた来ようと思う。きっと大会ではない店内の雰囲気は、おそらくまた別の顔なのだろうと思うと楽しみで仕方がない。
 そして、相模原が、ダーツの街として名乗りを上げて、プレイヤーが集まってくるような街になれば最高じゃないかと思っている。

 GAPS
 神奈川県相模原市中央区相模原2-10-1
 042-810-0567

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