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【AMA Darts.03】Yuki NAGATA

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2018.08.17 Fri.

なぜ人はダーツをするのか

 「なぜ山に登るのか……そこに山があるからだ」というジョージ・マロニーの言葉はあまりにも有名で、誰もが聞いた事があり、また「山」を他の何かに置き換えてギャグのように言った事もあるだろう。私は幾度となく「なぜダーツを投げるのか、そこにボードがあるからだ」みたいなことを言ってきたが、それももちろんギャグである。「下手のくせに何を言っているんだ(笑)」のような突っ込みが飛び交い、ついでにショットグラスも飛び交い、毎度毎度笑いに変えてくれた。それでも、笑わせるために言った事は間違いないのだが、心のどこかではダーツボードを前に、ダーツを手にし立った時には投げずにはいられない気持ちになっていて、今もまだある。
 ボードがそこにあって手元にダーツがあれば、投げたくなるのはなぜなのだろうかと考えてきた。「好きなのだ」と一言で済ませる事が出来るし、それ以上考える必要もないのも確かである。ではその「好き」という気持ちはどのように説明されるのか。この状態ははたして「好き」なのか?などと考えを巡らせていくと、まるで初恋の中学生のような「好きとは何かの定義」になってしまい、それはそれで訳がわからない。
 そこまで行くと「ダーツに恋してる」状態になり、もう「恋とはなにか」とおっさんが必死に考えている姿になってしまいかねない。それは避けたいものである。
 ダーツがどれほどいいものなのか、自分だけの気持ちなら説明する必要はない。しかし私は「ダーツのある生活がいいとオススメ、提案する事」が仕事の一つだとも考えており、様々なダーツバーを放浪しているわけである。
 ダーツが好き、ダーツにハマる状態とはどんな状態なのか、デスクの隣にいるバレルデザイナーに聞いてみた。彼は「S4(エスフォー)」のバレルデザイナーの永田である。私の先輩だ。

~ダーツの魅力~

 「そもそも人間の脳ってそうなってるんじゃないかな、わかんないけど。天野くんさ、『フォートナイト』ってゲーム知ってる?最近やってるんだけど。TPSなんだけど……(ゲームの説明は割愛)。気が付いたの、『何かを狙って打つなり投げるなりして、命中させたり的中させたりして倒すこと』が『面白い』と感じたり、『楽しい』と感じるように人間はなっていて。だから今流行り出しているんだよね。
 人間の原理なんじゃないかな。野球だってそうじゃん。ピッチャーはキャッチャーミット狙って投げて、バッターは飛んでくる球を狙って打つ。狙った速度で、狙ったところに行けばピッチャーは気持ちいいだろうし、狙った通りにバッターは打てば気持ちいい。サッカーもそうだよね。大体のスポーツはそういう事で出来上がっているんじゃないだろうか。

 ダーツの魅力は、野球やサッカーとかバスケとか、他のスポーツよりも、その『狙って投げる』事によって生まれる『面白い』『楽しい』『気持ちいい』が、敷居低くて、とても簡単に、それも毎回、連続で味わう事が出来る所なんだと思うんだよね。

 たとえばゴルフするとして、すごくお金がかかるじゃない。クラブ用意して、コースに行ってって。でもダーツはゴルフよりはお金がかからない。しかもそれほど気持ちいいショットなんて、ダーツに比べたら全然少ない。バスケをするとしたら、お金はかからないかもしれないけれど、体力をめちゃめちゃ使う。走り回って飛んで。これも『コスト』といわれれば『コスト』だよね。
 それにダーツはハットが出れば、その1ラウンドで3回はその『気持ちいい』瞬間がくるけど、他のスポーツではそんなに感じることは難しいんじゃないかな。バスケだって、点を取っている人でもだいたい1ゲームで20点、シュート本数なら10本くらい。その10本決めるために、気持ち悪い思いをその三倍はしているでしょ。
 だから、ダーツの一番の魅力って『狙って、投げて、気持ちいいっていう感覚を連続で、頻繁に感じる事が出来る』というところなんじゃないかな」

 --そういう意味で言うと、「eスポーツ」なんか、もうちゃんと「スポーツ」っすよね
 「そうだね(笑)」

~オーダーメイドバレルについて~

 --今、オーダーメイドバレルの企画やってて、すごく忙しそうですけど、なんか「バレルのトレンド」みたいなのってありますか?
 「3年やってて、100人以上のオーダーメイドバレルを作ってきたけど、絶対的に多いのが……といって6割くらいかな、なぜか、『重いバレル』のオーダーが多いの(笑)既存バレルの、たとえば17gくらいに設定されているバレルがあったとして、そのスペックで22gにしてくれとか、かなり多いよ。いいんだけど、オーダーメイドだから、好きに言ってくれて。軽いのがいいって言う人がほとんどいないのにはびっくりしたね。もっと多様性あってもいいものだけど。
 ……今年だけで言えば、急にストレートバレルがブーム(笑)最近出てるバレルもストレートが多いっていうのもあるんだろうけど。
 あとは完全に『この世に存在しないようなバレル』かな。売ってないような形を依頼される事もあるね。」

 --たとえば?(笑)
 「ただの棒とか(笑)カットもなにもない、ただの棒ね」

 ーー他に気になった事はないっすか?
 「ほとんどみなさんだけど、カットに対してこだわりが全然ないと思うな。大体『全長、太さ、重さ』の三つだけ指定して来る感じ。多分自分に合うスペックでオーダーしてきてくれるんだけど、カットに関しての注文は少ない。あったとして、あのバレルのここの部分とかがあって、そのカットの種類はわかっても、掘る深さだったり、かかる感じだったりの注文がないのが気になるかな。俺は、持った感じで合う合わないの一番最初はカットだと思うんだけど」

 --たしかに俺も気にしてなかったっすね、カットは。深さまでは気にしてなかったです。
 「そうなんだよね、オーダーメイドはカットの注文が少ないなと思うな」

~『S4』の狙い~

 「コンセプトは『お客様にワクワクしてもらいたい』だね。だから冒険が多いでしょ(笑)」
 --確かに、個性的すぎますよ(笑)
 「見た目から想像できないようなバレルを作ると、やはりダーツしている人は気になって一度は手に取るんじゃないかなって。たとえばインパクトとか、これどうやって持つんだよ(笑)みたいなバレルがあれば、みんな気になるでしょ。それに必ず『ダーツとしての実用性』を備えるように気を付けている。投げればわかるけど、ちゃんとダーツとして成立するように、長さ、重さ、太さを考えている。もちろん合う人にはぴったり合うと思うし、楽しんでもらえる。
 さっきも話に出てたけど、トレンドってあるじゃない。ストレート流行ったり、トルピード流行ったり。そうなると、各メーカーだんだんトレンドに寄ってくる。みんなだんだん長くなったり、重くなったりと、形も揃ってくる事が多いと思うんだけど、その中だからより『個性的』に見えるのであって、ダーツとしては成立するものを作っている。
 俺、ご飯食べに行っても、毎回違うもの頼むんだけど、食べた事があったり、見た目で味が想像出来ちゃうものは頼まない。美味しいだろうけど、感動がなかったりすると、考えちゃうし。
 ご飯だけじゃなくてすべてだけど、容易に想像できるものにお金を払いたくないんだよね、俺(笑)
 そういうのもあって『なんだ、これ』と思うようなものを作りたい。そして、もちろんダーツとして実用性ありきで作ってる。そうしないと、ダーツじゃなくなっちゃうからね(笑)
 変なのと思っても、意外に投げやすいことあるだろうし。手にとって感動してもらいたいなと思ってる」

~ブースでの楽しみ~

 --今回ダーツ祭りに出店する事になってますが、何か楽しみってありますか?
 「そうだなぁ……自分が作ったものを使ってくれている人とか、使ってくれた事がある人、S4バレルを知っている人に会いたいなと思うかな。それが楽しみ(笑)」

 8/25、26に開催されるダーツ祭りに『S4』が初めて出店する。
 http://www.s-darts.com/html/p…
 デザイナー永田もブースにいる。こういった表立った所に中々出てこないポジションの人でもあるので、ご自身も楽しみにしているに違いない。
 私も、その太古昔にダーツショップ店員としてお店に立ち始めた頃より、今までちょくちょく販売してきた『S4』のバレル。私は売れている事や、使ってくれている人、もしくは使ってくれていた人を何人も知っている。何セットも「おかわり」している人も多い。個性的だけど、合う人には合う。そしてバレルの種類も多い。気になるものがあったら、池袋店や各ダーツショップで試投げ出来ると思うので是非手に取ってもらいたい。

 この世界は多様的である。様々な人種、様々な考え方や生き方が混在しているのは当然なのである。
 バレルもそうで、その多種多様なダーツプレイヤー、ひとりひとりに合わせて様々な形があっていいと思う。いかにも個性的な形だとしても、必ず合う人はいる。自分に合うものを見つけた感動は、先述している「ダーツの魅力」のそれと等しいのではないだろうか。
 永田はそういう思いでバレルを作っているんではないだろうか。その永田が、ほとんど初めて、人前に出る機会がダーツ祭りである。何人か、私が実店舗勤務時代よりいる「S4ファン」が遊びに来てくれないだろうかと思って仕方がない。
 我々の憶測でしかなった、あのバレルの秘密について答えてくれるだろう。彼はそれを楽しみにしているところが見て取れる。

 私はまた今日もお昼休み明けなんかに、彼にこう聞くだろう「今日は何食べました?」ほとんど毎日聞いている。
 永田は「今日はねぇ……」と答えてくれ、その表情や話しぶりで美味しかったか美味しくなかったか、感動したか、しなかったかを教えてくれるに違いない。時に「twitterで見たんだけど……」と新しいお酒の飲み方を教えてくれ、試してみて、私も「美味しかった」「あれはちょっと……」など日常的に会話する事も多い。ちょい足しレシピなんかも豊富に持っているかもしれない。
 期間限定や一風変わった新商品などのカップ麺をストックしていて、俺はこれだ!!というこだわりがない。柔軟な感覚の持ち主なのだと私は推測している。
 永田は「ちょっと聞いていい?」と隣の席にいる私に、プレイヤーの意見を聞いてくれる事もあるくらい情報がほしい時もある。
 ブースで永田と話せば、そのアイデアがヒントとなり、S4の新作として登場するかもしれない。所属プレイヤーがいないS4だからこそ、お客様の、ユーザーの、プレイヤーのかゆい所に手が届く、個性的なヴィジュアルの、最高のバレルが完成するかもしれない。
 そういう意味でも、ブースにいる永田に話しかけてもらいたいと、切に願う。

 ダーツが生活の一部なら、何の変哲もない普段の生活だって、当たり前に過ごしているが、ひとつひとつが感動と奇跡の連続で、とても個性的なのだと教えてもらった気がする。
 ダーツというものは、もしかしたら、そういった当たり前の事が当たり前じゃないということを気が付かせてくれたりするかもしれない。
 だからダーツのある生活は、すごく素敵なのだ。

 『S4』
 https://www.s4-darts.com/

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