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ダーツボードのある光景

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2016.06.20 Mon.

はじめまして

と書くと、はじめてではない各方面の方々がきっと唖然とするはず。
「何やってんだ、アイツ……」と。
そのあたりのカラクリはいずれ追々順次個別に説明させていただくとして、ひとまず。

私は、シナリオライター、時に人は脚本家とも呼びますが、その世界では、ピラミッドの一番下、最底辺のあたりに属しているライターのような生き物、でした。

立場上、あまり偉そうなことは言えないのですが、たとえ最底辺とはいえ、なかなかにその関門は狭く厳しく、脚本を書く能力の他に運や人脈、その他諸々がないとプロのスタートラインにすら立つこともままならず、書く能力があっても運や周囲の人々、その他諸々に恵まれないと、あっという間に埋没してしまうという弱肉強食の世界、ごくまれに、書く能力がなくても運や人脈、その他諸々でなんとか……と書いていて、どの世界も大体そうだよな、と思ってしまったので脚本家ピラミッド、格差の話はここまでにしておきます。

自作についての回顧はいたしませんが、経歴を振り返ってみると、我ながら、運が良かった、人に恵まれた、その他諸々があって良かった、と思うこともしばしばです。

そして、ここが最も肝心なところで、ダーツと出会いさえしなければ、もうちょっとまともな脚本家稼業を送っていたかもしれないな、とも思うのです。

人生の歯車を狂わされた男

十数年前のある日、とあるプロデューサーが「ダーツやろうぜ」というので、初めてダーツバーを訪れました。

そこで出会ったダーツにどハマりしてからは、とにかくダーツグッズを買い揃え、朝から晩まで自宅での練習をこなしつつ、夜な夜なダーツバーにも入り浸り、酒をかっ喰らってはダーツを放り続け、かと言ってメキメキと上達するようなこともなく、やがてイップスになり、まともに投げられない状態が続いたある日、何故かそれは簡単に治り、かと言ってメキメキと上達するようなこともなく、ダーツを投げることが何か不毛な気さえし始めてきた頃、自分にとってダーツとは高みを目指すもんじゃない、楽しむもんだ、と気付いてからは更に現実逃避の日々、ああ楽しい、とても愉快だ、俺はダーツが大好きだ、そしてついでに酒も大好きだ、ダーツのある酒場に集う優しいみんなが大好き、ラブ、愛してる、ウィスキーをロックで、そうだ、酔いどれ作家になろう、今日から俺はブコウスキー、酒を呑みながら原稿を書いちゃう、大丈夫、書けるさ、今の俺なら、メイビー明日もハッピー、パッパラパー、コニャニャチワ、ムニャムニャ……。

そんな夢のような時間から醒めた時、目の前のPCの画面には真っ白な原稿が。
或いはそれが文字で埋まっていたとしても、クソつまらない内容のトンデモ駄文が並んでいるだけで、正気に返った私は顔面蒼白のまま絶望し、ただただうなだれるばかりであった。

というように、ダーツにのめり込んだ生活は、徐々に私の人生を狂わせていったのです。

諸悪の根源は酒だけど……。

ダーツによって救われた男

映画『リービング・ラスベガス』に出てくるニコラス・ケイジ扮する主人公はハリウッド映画界の脚本家という設定で、アルコール依存症のせいで仕事を切られ、最後は大好きな酒を飲んで死のうとベガスヘ向かう、という実に退廃的なあらすじ。

そんな破滅型の脚本家のライフログが大好きで、気付けば自分も同じように破滅への道をまっしぐら。

ダーツに溺れた(しつこいようですがダーツではなく酒です)私を救ってくれたのが、やはりダーツでした。

具体的にどう救われたのか、という詳細に関しては省きます。
後々、明らかになっていくかもしれませんし。

一つ言えることは、ダーツにのめり込んだことで培ったもの、運や人脈、その他諸々、様々な理由が絡み合って、今、なんとか生きている、ということです。

甘い蜜で誘っておきながら、いざとなると手痛いしっぺ返し。
そして、今度は「やっぱりあなたのことが……」と、また誘う。

まるで悪女のようなダーツに左右される我が人生、それでも、それはそれでわりと気に入っています。

さて

ダーツへの思い入れがあるからこそ気付くこと。
映画やゲーム、小説等で、ダーツボードの置いてある場面に遭遇すると「あ、ダーツ!」などと過剰に反応することが多々あります。

これらがただ流され、消費され、忘れ去られてしまうのはもったいない。

何故そこにはダーツがあったのか、ということを考えると、その作品の魅力、バックグラウンドなども更に深く掘り下げられるような気がしてならないのです。

そこで様々なメディア、芸術、文化の中からダーツボードのある光景を見つけ、ダーツと関連作品をそれぞれ考察してみる、という内容で、次回より綴っていこうと思っています。

どうなることか。

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