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Happy ダーツ

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2018.03.06 Tue.

『ダーツ物語ものがたり』

ダーツをモチーフとした映画やドラマを作ってみたらどうだろう。

十数年前、ダーツに熱中しだした頃、そんなことを考えるようになった。
ダーツをどう物語に落とし込むか、頭の片隅には常にそのことが置いてあった。

ダーツ人口を増やそう、とか、ダーツを知らない人に広めようと、とか、高尚で啓蒙的な活動がしたかったわけではない。

自分が熱中しているもの、通じているものを素材に使い、それでシナリオを書いて、なんとか食い扶持を稼ごうと必死だっただけだ。

ある日、某テレビ局のドラマ製作部の某有名プロデューサーと接見する機会があった。

私はそれまでの日本のダーツシーンにおける諸々のデータを集め、簡単な企画書を事前に用意し「今、巷ではダーツの人気が高まってきているんですが、ダーツをモチーフとした映画やテレビドラマを製作してみてはどうでしょうか」とお伺いを立てた。

当時は、空前のダーツブームの真っ只中。
これだけ流行っていれば、テレビ局も多少は興味を持ってくれるに違いない、と私は良い返答を期待していた。

だが、意に反し、返ってきたのは「うーん……難しいね」という渋い反応だった。

その後、某プロデューサーは、何故ダーツという素材が難しいのか、懇切丁寧に、かつ的確に解説してくれたが、まだ若かった私は自分の推測とは異なる結果に意気消沈し、上の空で生返事を返すのがやっとだった。

確かにブームがやってきてダーツをする人たちは増えた。
しかし、まだまだダーツというコンテンツはマジョリティの文化ではない。
お前らはそんな狭い世界で何を偉そうにワイワイやっているんだ、こっちはもっと大勢の人たちの興味を惹かねばならないのだ、と鋭く指摘されたような気さえしていた。

そうか、そうだよな。
わかった、ダーツを素材にするのは一旦置いておこう。
そう遠くない未来、いつかダーツが世間一般に認知され、世のプロデューサー方が「今、ダーツの映画やドラマを作ったらヒットするはず。どっかに誰かいいライターいないかな」なんて時のために、ここは企画を温めておくのが最善策だ。

残念ながら今日は惨敗だった。
こういうのは失恋と同じで決して振り返ってはいけない。
気持ちの切り替えが大事、ドンマイドンマイなどと自分に言い聞かせつつ、私は日常へと戻っていった。

酒を飲み、ダーツを投げる日常。
シナリオライターというよりも、アルコールドリンカー、ダーツスロワー。
脚本家ではなく飲酒家、投矢家。

そのうち、幸いにも深夜ドラマのシナリオを書かせてもらえたりした。
だが、ダーツをそこに登場させることはしなかった。

ダーツは、またいつか別の機会に。
自分がやりたいように、ダーツの物語を作るのだ。
どんな物語がよいのだろうか。
来るべき時のために、私は投げよう、ダーツを。
飲もう、酒を……。

そんな時だった。
唐突に衝撃的なニュースが飛び込んできた。

「ダーツが映画になるんだって」

え?

ウソだろ……。

調べてみると『Happyダーツ』という題名のその映画は、どうやらラブコメ路線のような軽いタッチの物語であり、有名ダーツ選手や業界関係者が沢山カメオ出演する、というのがウリの身内ノリで作られた映画のようであった。

なんだか悔しかった。
先に企画を出そうとしていたのはオレだ。
オレがやりたかったダーツの物語は、そんなのじゃない。
やだやだ、そんなのやだ……。

よーし。
どんな作品か観てやろう、そして観た上でボロクソにこき下してやろう。
なんじゃこの映画はアハハ、しょうもな! と。

だが、映画館へは行かなかった。
何故なら、私が支払う入場料であるところの二千円くらいが『Happyダーツ』の興業収入額として加算されてしまうからで、初のダーツ映画として興業的に成功させてしまったら、私はより悲しくなってしまうではないか、という考えに至ったのである。

そう、当時の私は、お猪口くらい器の小さな、ただの偏屈男だった。

それから更に十年が経ち、多少なりとも大人になった私は、当時のことを猛省した。
あの時の悔しさを思い出せバカ、お前にはやらなければならないことが多分ある。

やらなければならないこと?

そうだ……今となってはもはや誰も触れることのないダーツ界の黒歴史、開けてはならぬパンドラの箱、『Happyダーツ』を観るのだ。

いつ?

今でしょ。

そうやって私はDVDプレミアムエディション(新品)を自腹で購入することにしたのです。

Happy ダーツ

まず、申し上げますが、私にはこの作品についてボロクソ言う権利がある。

何故なら、自分のお財布の中のお金を支払って新品DVDを正規のお値段で購入したからだ。
しかも、豪華特典ディスクのついたプレミアムのやつ。

過去に映画館へ無料でご招待されたり、関係者だからといってサンプル盤を無償でもらったわけでもなく、製作サイドからお金をもらって「良いこと書いてくださいよ」と頼まれたわけでもない。

心置きなく私の中の悪魔が感じた悪口雑言の数々を書き連ねてやろう。

そういう意気込みでDVDを観始めた。

ふむ……。

あれ……。

意外と悪くない。

導入部から、ダーツ(ソフトティップ)というものについて、かなりわかりやすく説明が入れてあり、興味のない人が観ても「なんかダーツ面白そう」と思えるような内容になっている。

ただ、映画として成立しているかというと、それはしていない。
ゲーム内容やルール説明のオンパレードだし、ポップでわかりやすい演出はどちらかというとテレビドラマやバラエティ番組のそれであり、間口を思いっきり広げたダーツ教則ビデオ風でもある。

ストーリーについてはベタ中のベタ。
失敗しないためのチョイス、安全牌を選択したのだな、と思う。

ダメOLがダーツバーを訪れ、店員に一目ぼれ。
毎日のように通ううち、ダーツで負ける悔しさを知り、上達しようと奮闘する。
その甲斐あって短期間で上達し、日本最大の大会に挑んでいくというサクセスストーリー。

恋愛成就=ダーツの上達、という図式が理解できない。
彼とHappyになりたいのか、ダーツが上手くなりたいのか、その辺りをしっかり描いていけばいいのに、強引に力技で結びつけてしまうので消化不良感がある。

なんとかエンディングまで観終わったところで、ハッとあることに気付いた。

主人公であるところのダメOLは仕事にも恋愛にも半ば絶望した状態でスタートする。
対してエンディングでは、ダーツが彼女にある希望をもたらす作りになっていた。

そこには、自分がダーツの物語を作る際に、決して外せない要素の一つが盛り込まれていたのである。

人には、人生で挫折する局面が必ずあり、挫折を乗り越えて成長していくのだ、と皆、口を揃えてそう言う。
でも、どうやって乗り越えていったらいいのかわからない場合もある。

そんな時に、救ってくれるのがダーツなのだ。

嫌なことを忘れる、とか、初めて知り合った人々が新たな力になる、とか。
そんなのわざわざダーツじゃなくたっていいだろう、という人もいるかもしれない。

でも、でもだ。
現に私自身がダーツに救われており、その時は、ダーツでなければダメだった。
ダーツではなく他の何かでは、まったくダメだったのだ。

それが例えどんな挫折であろうと、ダーツは人を受け入れ、ダーツは人を許す。
ダーツにはそういう懐の広さがある。

そのことを『Happyダーツ』は映画を通して伝えていた。
私も、私なりの物語を通して、このことを伝えていかなければならない。

最後に。
ダーツの懐の広さに甘え続け、努力を怠ったり、すべきことをしなかったりすると、いくらダーツでも堪忍袋の緒が切れて、また新たな挫折を迎えることになりますので、お気をつけて。

森泉さん演じるところの八王子さん、ダーツが上手い。さすがチャンピオン役。

豪華特典ディスク・その内容

・メイキング
・舞台挨拶映像
・イケメンダーツ大会
・ダーツ合コン

付録的なものかと思って軽い気持ちで観始めた。

これはマジで触れたらアカンやつでした……特にダーツ合コン。
観ているコッチが恥ずかしくなるシロモノ。

闇に葬ろう。

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