Trainspotting

イギリス映画
およそ二週に一度、ダーツボードのある光景をお届けしてまいりました。
が、遂にストックしていたネタが尽きました。
ネタがないなりに頭を雑巾のように絞って考えたところ、ある結論に行きついた。
ダーツといえば英国。
イギリス界隈の映画を探れば、ダーツボードのある光景なんてゴマンと出てくるに違いない。
おお、ナイスアイデア。
というわけで、ひとまずロンドンオリンピック開会式の芸術監督を務めたダニー・ボイル監督に焦点をあててみた。
長編デビュー作の『シャロウ・グレイブ』を二十年ぶりくらいに改めて観直す。
が、最初のシーンから終わりまで、目を皿のようにして一通り確認したものの、初々しいユアン・マクレガーが出てくるばっかりで、肝心のダーツボードが出てくる場面は、なんと、一秒たりとも存在していなかったのである。
がびーん。
おのれ、ダニー・ボイル。
デビュー作でダーツを取り上げないとは、イギリス人の風上にも置けんやつだ。
日本でいうところの、作中で『相撲』を取り上げないのと同じである。
周防正行監督の『シコふんじゃった』を見習え、と声を大にして言いたい。
うぬぬ、『シャロウ・グレイブ』は不発に終わったが、まだまだ、まだ終わっていない。
これぞとっておきの、ものすごく思い入れのある作品、最終兵器的作品を私は知っている。
Trainspotting
ダニー・ボイル監督、1996年の作品。
日本でも公開され、しかもロングランヒットを記録した快作である。
当時、私も映画館へ観に行ったことを、よく覚えております。
渋谷のスペイン坂をのぼったところにある映画館(今は閉館)の中へ入ると、ファッション誌からそのまま飛び出てきたようなオシャレな若者ばかり。
一方、田舎から飛び出てきたばかりのリアルグランジファッション(カート・コバーンの真似、じゃなくてただ金がなくて小汚いだけ)な私は「お前らなんかにこの映画の良さがわかってたまるもんか」とか「グランジイズデッド」とか内心毒づきながら、たった一人、席に座った。
この映画の良さ云々、というが内容は大したことない。
ヘロイン中毒の若者(ユアン・マクレガー)が、地元連中の悪いしがらみから抜け出そうと足掻く物語である。
しかし、映像は当時にして正にスタイリッシュ。
目の前のオシャレ映像に圧倒された後、アーヴィン・ウェルシュの原作本をすぐに手に入れ、サントラを買い、すっかりジャンキーたちの生活に魅了されてしまった。
余談だが、それが原体験で薬物摂取ではなく薬物自体に興味を持ち、『マリファナ・ナウ』とか『危ない薬』だとかの書物を集め始め、めくるめくアンダーグラウンドカルチャーにずぶずぶハマっていくのだが、その話はまたの機会にするとして、今考えると随分とアホウな若者ではあった。
そういえばこの作品、イギリス映画だけど舞台はイングランドではない。
最近、独立騒動のあったスコットランドという地域である。
ややこしいが、北アイルランド、ウェールズ、イングランド、スコットランド、という四つの地域の連合から成り立っているのが通称イギリス(ユナイテッドキングダム、もしくはグレートブリテン)なのだ。
ダーツやサッカーのワールドカップでは、それぞれ別に代表チームがあり、ダーツの現ワールドチャンピオン、ギャリー・アンダーソンを輩出したように、スコットランドもダーツ先進国なのである。
当然、この映画作品の中にもダーツボードが、あ……あれ?
な……ない。
全然、出てこないやんけッ!
慌てて、最初に巻き戻って、再生し直した。
目を皿のようにして。
そしたら。
ホラ、ありましたよ、ダーツボード。
ほんの一瞬だけど。
日本ではありえない場所にボードを設置してるんスね、スコットランド。
バウンスアウトしたら、椅子に座ってる人の脳天にダーツが突き刺さります。
ある意味、投げている人はバウンスアウトしちゃいかんというプレッシャーで上達するのかも……。
まさかの
この『Trainspotting』を足がかりにダニー・ボイル監督は、あれよあれよという間に出世(ハリウッド進出)を果たし、『ザ・ビーチ』や『スラムドッグ$ミリオネア』といった作品群を作っていくわけです。
ロンドンオリンピック開会式の芸術監督に選ばれた時、『Trainspotting』に思い入れのあった私は、我が事のようになんとなく嬉しかった。
そんなファンに朗報がありまして、およそ20年ぶりの続編、作ってるらしいです。
レントン、ベグビー、シックボーイ、スパッド。
まともな人生を歩んでるとは到底思えないけど、どうなってんでしょうね。
ま、きっと私は、作中にダーツボードが出てくるかどうかを気にしながら観るに違いないですけど。