ブレイブハート

映画の中のダーツを探して
日夜、記憶の糸を辿っていた。
映画を観ていて唐突にダーツボードが映り込み、「あ、ダーツ……」と思う瞬間が沢山あったんだけど、それが何の作品のどの場面だったか、まったく思い出せない。
『Amazonプライム』や『dTV』の見放題の映画タイトルを画面に並べ、これはこんな内容だった、とか、あんな場面があったはず、とか、可能な限り思い返してみても、ダーツボードの記憶は一向に蘇ってこない。
それどころか「この映画は観たことがない」と思って観始めた映画は、ハラハラドキドキしながら前半の山場を完璧に楽しんだところで「なんかコレ観たことある!」と気付く有様。
話の展開を知っているからといって途中でやめると、それはそれでなんか気持ち悪いので、結局終わりまで観直した。
役立たずのポンコツ脳である。
それでも、無数の映画タイトルを眺めていると、とあるタイトルを前に、ポンコツ脳が一つの可能性を明示した。
スコットランド、メル・ギブソン、イングランド、ソフィー・マルソーかわいい、といったキーワードが頭を巡る。
ムム、この映画は……限りなく怪しい……。
ブレイブハート
時は13世紀末頃、イングランドの圧政からスコットランドの独立を目指して戦った一人のカリスマ、ウィリアム・ウォレスという実在の人物をフィクションで描いた作品。
13世紀末から14世紀初頭が舞台となれば、ダーツの起源とも近い。
ひょっとしたらダーツっぽいことをしている場面が描かれていたかもしれない。
いや、確かそのような場面があったはず。
よし、観直してみよう。
というわけで、観てみた。
冒頭は主人公ウィリアム・ウォレスの幼年時のエピソードが語られる。
イングランド軍への反乱で父を亡くした子供のウィリアムは、おじのアーガイルに引き取られ、他所の村へ。
時間が経過し、成年した(というか、メル・ギブソンなのでオッサンにしか見えない)ウィリアムがもとの村へと戻ってくる。
村は変わらずの圧政に苦しんでいた。
当初、ウィリアムは政に我関せず、平和な農夫であることが一番の幸せ、と静観の構えを見せるが、ある事柄をきっかけに大逆転。
怒りのウィリアム・ウォレス率いる村の衆が、イングランド軍を相手に反逆の狼煙を挙げたところで場面はイングランドへと転じる。
転じた先は、暴君のイングランド王エドワードⅠ世と、ドラ息子のエドワードⅡ世が居城にて対話する場面。
「あっ!」
そこでエドワードⅡ世が側近や侍女と嗜んでいたのは、果たして!
「ダーツ……じゃない」
そこに映し出されたのは、ダーツではなく弓を使ったアーチェリー(遊び)であった。
ま、いいか。
ダーツの起源には、アーチェリーの矢を引き抜いて手で投げ始めた、という説もある。
つまり、これはこれでダーツの源流とみなそう。
『円周率は3』とみなした公教育、ゆとり学習と同じだ。
的が丸いところなんか、ほぼダーツと呼んで差し支えない(あるけど)。
いやあ、イングランドやスコットランドを描いた作品の中に、ちゃんとダーツが登場してホッとしたネ(ダーツじゃないけど)。
ちなみに、アーチェリーがちゃんと競技化されたのは17世紀頃なので、ここからあと数百年後のことである。
ちなみにちなみに、同じ頃、日本は鎌倉時代後期。
鞠をぽこぽこ蹴飛ばして遊んでいた。
抑圧からの解放
ダーツが登場する、しないに関わらず『ブレイブハート』は素敵な映画である。
イングランドとスコットランドの関係性や周辺諸国との軋轢など、映画を楽しみながら当時の歴史を何となく学べる。
なによりウィリアム・ウォレスという愛に生きる色男が実に格好いい。
スコットランドの独立、自由を求めて戦い続けるその姿を観れば、きっと普段の我々の生活の原動力にもなるでしょう。
ウォーレス! ウォーレス!
『円周率は3』と覚えた方も、映画を未見のダーツプレイヤーも、お小遣い制の生活を送るおとっつぁん方も、パワハラに悩む男子も女子も、ぜひ一度観ていただきたい作品である。
そして、観終わったらみんなで大声で叫ぼう。
「フリーダーム(自由を)!」と。